為末さんと末吉代表

Project talk/プロジェクト対談


Deportare Partnersと描く、スポーツxテクノロジー
短距離走自動測定器を共同開発し、スポーツ体験を日常の中に

Outline

走る楽しさを、全ての人に。誰でもどこでも挑戦。

株式会社Deportare Partners(以下、Deportare Partners)とクウジットは、「短距離走自動測定機」 共同開発プロジェクトを2021年1月に発足し推進しています。Deportare Partners代表は、男子400mハードル日本記録保持者で、 現在は執筆活動や幾つものプロジェクトに参画されている為末大さん。本プロジェクトにおいて、 Deportare Partnersは、コンセプト発案・企画マーケティングを担当し、クウジットは、測定器ハードウェア、 センサー組み込みソフトウェア、サーバーソフトウェア、 アプリケーションソフトウェアまで一貫したシステム開発を担当しています。 2021年11月にはイベント貸出可能なポータブルバージョンを完成し、現在、様々なフィールドで実証が進められています。

◎プロジェクト履歴

2021年1月 プロジェクト発足
2021年9月 豊洲においてイベント初使用
2021年11月 ポータブル版開発
2022年10月 ピアストリートを駆け抜けよう/20Mダッシュチャレンジ(三井アウトレットパーク木更津)にて採用
2022年11月 まちなかスポーツフェスティバル(浜松市ギャラリーモール ソラモ)にて採用
2022年11月 ひろしまストリート陸上(広島県立総合体育館)にて採用
新豊洲Brilliaランニングスタジアムでの常設稼働、および各種イベントでのポータル版利用実績を経て、「遊びスポーツ」ビジョンが制定され、その実現へ

コンセプト発案・企画 : 為末大
マーケティング : 株式会社Deportare Partners
開発 : クウジット株式会社 小野・石井

Process

走ることは自分との対話

2021年1月、Deportare Partners為末大さんより、誰でも走ることを楽しめるような機会を作れないだろうかという相談がありました。 日本はスポーツが広がっているスポーツ大国ですが、才能がある子を選び取りその子を鍛えていく、 選択と教育には長けていても、みんなが楽しめるような遊びに近いスポーツがまだ広がっていない、 というのが為末さんの問題意識でした。

クウジットならではのテクノロジー支援を組み合わせるためにも、為末さんの問題意識の背景にあるものを掘り下げたいと思い、 何度か対話を繰り返しました。為末さんの問題意識を対話を通じて掘り下げていくと、「遊びスポーツ」というキーワードが浮かんできました。

走ることは本能的なことで、子供のうちはどんな子も面白いものを見つければ自然と走り出します。 それがみんなに見られることで重圧を感じ走ることが嫌いになる子が増えていきます。 スポーツになり過ぎないで遊びに近い状態でいられたらもっとみんな体を動かすようになるのでは無いか。 周りを気にせず、かしこまらず、全力で走る心地よさを体験し てもらえれば走ることが好きになる人が増えるのではないか。また、テクノロジーを通じて世界とつながり、 過去の自分の履歴を残すことで、昨日の自分よりも速くなる面白さや、 どこで走ってもタイムを残せるようなことができればもっと面白がってもらえるのではないかと考えました。

為末さんは、2007年に、丸の内で東京ストリート陸上というイベントを企画し実現した経験から、 このまちなかでスポーツするということに可能性を見出して、今の活動につながっているとのことでした。 この競技場ではなくても、どこでもいつでもタイムを測れるということがかけっこ自動測定器プロジェクトにつながり 「え、こんな場所で走れるの?」という風景が浮かび上がっていました。

また、子供の運動教育に目を移すと、小学生以降は、本気でスポーツをやるか、そもそもやらないかの二極化が進んでいます。 もっとのびのびと多様にスポーツをする受け皿があってもいいのではないかという話がありました。 丸一日使って大会に出たり、わざわざ遠くまででかけなくても、買い物の間の15分でできるスポーツがあれば もっと多くの人がスポーツに親しめるようになると裾野も広がる可能性があります。そうなると様々なデータも蓄積されていき、 教育や健康の文脈で社会インフラとして育っていくのではないかと話し合いました。

クウジットは、これらの対話を経て、そのビジョンに共鳴。これまでのIoTセンサー活用とアプリ開発、 およびAIデータ解析の強みを生かして、 テクノロジー支援できるのではないかと考え、 Deportare Partnersとクウジットとの共同研究プロジェクトが発足しました。

知的好奇心xテクノロジーで共走がはじまった

本プロジェクトでは測定器ハードウェア、センサー組み込みソフトウェア、サーバーソフトウェア、 アプリケーションソフトウェアまで一貫した開発を行っており、2022年10月現在、 独自のセンサーソリューション「Human Flow Counter」での経験を生かした非接触タイプの計測器を制作。 走行データを自動収集しランナーにフィードバックすることのできるクラウド型のサービスを開発しました。

可搬性・取り回しの観点から、従来の一般的な光電管計測器のようなスタート・ゴールを有線接続したものではなく、 スタートとゴールのセンサーを無線化した設計を行いました。

精度や構成など、計測器自体の機能面での試行錯誤を行う一方、イベント等での実際の利用シーンを想定し、 計測したデータをサーバにアップして取り扱うことのできるよう、単なる計測機器にとどまらない"IoT"としての機能も重視し、 機能開発・追加を行っています。

イベント管理を行う視点では、アップしたデータをWeb上で管理できる機能を設け、さらに、複数の地域や拠点での イベント実施においても集計がしやすいよう、柔軟な設定ができるようにしました。
また、ランナー体験の視点でも、より楽しめる要素を…という観点で日々、プロジェクトチーム内で議論を行っています。 イベント毎のランキングを会場内のディスプレイ等に表示する機能や、ゴール検出を利用して撮影した写真をアップし、 自身の記録とともにスマートフォンで見ることのできる機能といった"IoT"ならではの仕組みなど、プロジェクト内や フィールドテストから出て来たアイデアを開発サイクルに盛り込み、試作・実験してきました。 こうした開発サイクルを通じ、クウジットは、持ち前の知的好奇心と妄想力で、未来のわくわくの種を一緒に育て共創・ 共走しています。現在、各フィールドでの運用実験を経て、イベント貸出を行っており、そこで得られた結果や課題を ベースに逐次、改善を行っており、実際に利用してくれる場や事業者の方々を募集しています。

計測器イメージ ※2022年12月時点

Interview

末吉:為末さんと、今回ご一緒している「短距離走自動計測器」プロジェクトのみならず、 「スポーツxテクノロジー」のテーマで、今後の展開やありたい未来についてお話しできればと思います。
まず「短距離走自動計測器」プロジェクトは、ようやく各地域でイベント主催している方がたに貸し出して 利用してもらうフェーズまで来ました。この先、どのような展開で共走していきましょうか?
為末:まず、実際のフィールドの方々にどんどん使ってもらってフィードバックをもらいつつ改良、 改善を繰り返していきたいですよね。かけっこ教室やイベント利用での様子を見ていると、何度も走ってくれる人や子がいて、率直にうれしいですよね。
末吉:そうですね。走行履歴を見ると、1人で何度も走ってくれている人がいます。 そんな方の様子を見ると、やはり自分の過去の記録と照らし合わせたりしてたり、写真機能がついてからは、自分のゴール写真の写りをチェックしたり、 それぞれの観点で使い方を楽しんでくれている様子ですね。子供なんかは、ほんとに飽きずに何度も何度も面白がって使ってくれてますものね。
為末:私は「スポーツとは身体と環境の間で遊ぶこと」と考えています。 スポーツは遊びだと捉えるとやらなければならないことは、とにかく敷居を下げることです。 トレーニングもいらないし、時間もそんなにかけなくてもいい。遠くまで行かなくて近くにある方がいい。 とにかく気軽にいつでもどこでもスポーツができる環境が大事だと思っています。
たとえば、今、豊洲ランニングスタジアムで試験運用兼ねて常設設置していますが、このようなスポーツ施設だけでなく、 公共空間と重なりあい、アスリートのみならず市民の方々が気軽に身体を動かして親しむような利用シーンに 組み込まれていってくれるとうれしいですね。
とにかくリアルで夢中で走ってもらう。そんな場を増やしていきたい、というシンプルなビジョンです。 クウジットの「空」と「実」をつなぐ、の意味では、「実」の部分ですよね!
末吉:ありがとうございます!その意味で「空」の部分をサイバー空間とあてて考えてみると、 走った記録がデータ化されて蓄積されていくと、さまざまな展開が考えられますよ。 センサー機器でのテクノロジー支援のみならず、AIデータ解析技術などの活用で裏側を支援することができるのでは と思います。例えば、自分や子供の成長記録はもちろんのこと、走行データと地域や環境データとかけあわせて、 利用回数や記録の伸びは、どんな因子に効いてきているのかなどを因果情報分析(CALC)にかけていくと、 潜在的な地域差や環境差などが浮かび上がってきます。それを為末さんに解釈してもらい、また次の施策につながっていくと面白い 展開になるだろうな、とか考えています。
これは、データが蓄積されていかないとできませんが、データが貯まるまでは、為末さんの小学校時代のタイムと比べたり、 同業異業種大会(たとえば、○○運輸vs.○○急便、○○建設vs.○○建物とかでどちらが速い?)とかで競ったりとか、 いろいろ工夫もできますからね。あ、遊びだから比べたらいけないんでしたっけ?(笑)
為末:いやいや、遊びは、PLAYの遊びのみならず、すき間とか余白の意味の遊びもあります。 遊んでいる中には競走したい子もいるし、そうではない子もいる。目標を持って自分と競い合うのも遊びですしね。 いろんな遊び方が内包されるといいなと思っています。
末吉:今後の展開、楽しみです。スポーツxテクノロジーでの共走、未来のありたい姿を実現していくためにも、 さらに一緒に走ってくれる事業パートナーの方々を増やしていきたいですね。ぜひご注目ください!
会社名: 株式会社Deportare Partners(デポルターレ パートナーズ)
代表者: 為末 大
URL: https://www.deportarepartners.tokyo/
株式会社Deportare Partnersは、身体を通して人間の可能性を探求するプロジェクトに取り組んでいます。 新豊洲Brilliaランニングスタジアムでは走ることを通じスポーツを切り口とした地域社会への貢献を実践しています。

2022.11.14
新豊洲 Brillia ランニングスタジアムにて
https://running-stadium.tokyo/

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